ヴァイオリン製作工程のご紹介

ヴァイオリンが完成するまでの工程の様子を、写真にて簡単にご紹介いたします。

まずは、ヴァイオリン製作に使う木材です、左から、横板材、ネック材、裏板材、表板材です。

表板だけ、スプルース(もみの木の一種)で、その他はカエデを使います。


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裏板と表板は、放射状に「みかん割り」した木材をさらに半分に切断して、写真のように貼り合わせます。
こうすると、左右の模様が対称になり、見た目の安定感とともに、音響的にも左右のバランスが取れます。
裏板は、幅の広い木材を使用して、1枚板として製作することも多いですが、どちらかが音響的に優れているということはありません。


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横板は、厚さ1.2ミリくらいまで削り、高温に熱したアイロンに押し当てて、ヴァイオリンの形に曲げます。
木材に水を十分に含ませると、曲げやすくなります。


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曲げ終わった横板を、内型に取り付けて整形したブロック材に貼り付けます。
この時点で、初めてヴァイオリンの外周(アウトライン)の形が現れます。


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完成した横板のアウトラインに合わせて、裏板と表板にヴァイオリンの形をデザインして、2.5ミリほど大きめに切り抜きます。


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切り抜いた裏板と表板を、大きな丸ノミを使って荒削りし、アーチの原型を作っていきます。


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まだまだ大ざっぱな荒削りですが、この時点でバランスの取れた形にしておくことは、この後の工程をスムーズに進めるためには重要なことですし、仕上がりのアーチにも影響してきます。


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アーチは荒削りの段階ですが、楽器のアウトラインを完全に仕上げて、パーフリングの溝を掘り、パーフリングを入れていきます。
幅が1.2ミリ程度、深さは2ミリ程度の溝にニカワを流し込んで、パーフリングを入れ込んでいきます。
このことで、裏板と表板の外周が補強されて、割れなどのトラブルが起きづらくなります。


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ミニカンナを使って、アーチを形成していきます。
まだ仕上げには遠い段階ですが、丸ノミ作業と同様、最終仕上げのイメージを明確に持って作業することが大切です。
アーチの形状は、造形的な美しさも必要ですし、音響的にも大切な要素ですので、木材の性質を慎重に見極めながら大胆かつ繊細に削っていきます。


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アーチの最終仕上げは、スクレーパーという、薄い鉄板に刃を立てたものを使います。
湾曲した部分に合わせてスクレーパーを曲げながら、少しずつ削って仕上げていきます。



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アーチが仕上がったら、反対側を削って厚みを出していきます。
アーチと同様、大きな丸ノミで荒削りしますが、貫通してしまいそうな恐怖と戦いながら、少しずつ、でも勢い良く削っていきます。


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ミニカンナで、残りコンマ数ミリのところまで削っていきます。
この作業は、楽器の外観には関係なく、音の良し悪しだけに関わる部分なので、楽器の音が良くなるようにだけ意識を集中して仕上げていきます。



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厚み出しゲージを使って、コンマ1ミリ単位で厚みをコントロールしながら、厚みの分布を作っていきます。
薄くし過ぎると、軽く音が出しやすい楽器になり、最初は良い楽器に思えますが、強度が不足した場合、年月と共に楽器が変形してしまい、鳴らない楽器になってしまいますので、木材の性質を見極めながらの慎重な判断が必要です。



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表板の厚みがある程度仕上がったら、エフをデザインして糸鋸で切り抜きます。
糸鋸の作業は、厚みが少し残っている段階で済ませたほうが、表板がたわまないので切り抜き易いです。



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良く切れるナイフを使って、エフの形を整えていきます。
木目にナイフが取られてしまい、きれいな曲線になりづらいですが、全体のバランスが取れたら、ヤスリで仕上げていきます。



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エフが仕上がったら、バスバーを整形して表板に密着させて、ニカワで接着します。
バスバーは、ブリッジ(駒)の低音側の足の下を通る位置に貼り付け、楽器全体を補強するとともに、主に低音側の振動を表板全体に伝える役目を持っています。



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バスバーが貼り付いたら、ミニカンナで整形していきます。
弦の圧力に負けないように、十分な強度を維持したいですが、低音を豊かに響かせるためにはある程度の軽さ、細さも必要になるので、その兼ね合いが難しいところです。



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ボディを閉じる寸前の状態です。
最初に使った内型は、この時点で抜いてしまい、ブロック材だけが楽器の柱として残ります。
通常、この時に製作者の名前を書いたラベルを貼ったり、焼き印を押したりします



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スプールクランプという道具を使って、ニカワで表板を貼り付けてボディを閉じます。
貼り付ける前には、もちろん十分に最終確認しますが、それでも毎回、何かやり残したことがないか、心配になります。


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ウズマキの部分をノコギリで削っていきます。
いらない木材を切り落とすだけの作業ですが、余分な肉が残り過ぎると後の作業が大変なので、できるだけ精密にノコギリを使う必要があります。




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ウズマキを、数多くの丸ノミを使って仕上げていきます。
音にはほとんど関係のない、彫刻のような仕事になりますが、目指す流派、師匠から受け継いだスタイルや、製作者の個性が明確に現れますし、美的感覚が問われる部分ですので、ボディのアーチと同じ真剣さを持って仕上げていきます。



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ウズマキも、最後はスクレーパーで仕上げます。
細かいデコボコを取りながら、美的なバランスが取れた造形を目指していきます。



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ウズマキが仕上がったら、ボディとの接合部をノミで彫り込み、ニカワで接着します。
ネックの長さはもちろんですが、左右上下の角度が正確に取り付けられているかどうかで、演奏のし易さや音色の優劣に関わってきますので、技術力が問われる作業です。



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ネックの仕込みが終わって、全体の仕上げが終わったら、ホワイトヴァイオリンの完成となります。
ホワイトヴァイオリンは独特の美しさがありますが、通常は引き続きニス塗り工程に入りますので、この姿でいる時間は短いです。



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ニス塗りは、アルコールニスの場合、一日に一回塗っては乾かしての繰り返しで、だいたい30回前後は塗りますので、ニス塗りだけで一ヶ月程度の時間がかかります。
最初は黄色で、少しずつ色を乗せていく感じで、色が十分に濃くなった時にニス層の厚みも丁度良い具合になるように、調整しながら塗っていきます。



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ニス塗りが終わったら、磨き作業を経て、部品のセッティングになります。
魂柱は、駒の高音側の足の下に立てて、表板を弦の圧力から支えるとともに、駒から伝わった振動を裏板まで届ける役目も持っています。
魂柱があることで、表板と裏板の振動が同調して、統一感のある響きが生まれます。

魂柱の位置はとても重要で、良い位置にあるときは、弦の振動を増幅して、大きな響きが生まれますが、悪い位置にあるときは、表板の振動を打ち消してしまい、鳴らない楽器の原因となってしまうこともあります。



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糸巻きは、鉛筆削りのような道具を使って、一定のテーパーを持って削ります。
このテーパーによって、適度な摩擦が生まれ、回しやすくて止まりやすい糸巻きを実現できます。



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糸巻きのテーパーに合わせて、ネック側の穴も調整します。
テーパーとともに、この穴の大きさによって、糸巻きの出っ張り具合が決まりますので、デリケートな作業となります。



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表板のカーブに合わせて駒の足を削り、密着させます。
ヴァイオリンの音の入り口となる駒ですが、足が上手く密着していないと、その性能が活かせませんので、楽器製作の最後の仕上げとなる大切な作業です。




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弦を張り、調弦をして、楽器の完成となります。
楽器製作のスタートから完成まで、約3ヶ月の時間をかけての完成は、まさに「誕生」という言葉がぴったりきます。
初めて出た音が、元気な産声のように響けば、嬉しさとともに一安心というのが正直なところです。
この先、何十年もかけて、どのような楽器に育っていってくれるのか、製作者として、とても楽しみに思える瞬間です。


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最後までご覧いただき、ありがとうございました。



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by sguscia50 | 2019-03-14 15:13 | 楽器製作全般